研究の目的:
個人の情報さえ自由にあやつるユビキタス社会がやってこようとしている。住宅設備は自動化され、生活用品にはすべて固有の管理情報ががつけられて、日常生活の雑務から人は解放される。産業界はそう近未来の夢をかたる。けれども、そのとき家庭はどんな姿をみせているのか、人間はどうなっていくのか、じつのところ、誰も明確なイメージをつかめないまま、ユビキタス社会をささえる要素技術の開発は急速にすすみつつある。
現代人は大量生産された膨大な物にかこまれてくらしている。私たちは、それらの物を生活用品として利用するだけでなく、さまざまな思い出を物に託して自己の世界をかたちづくってきた。家庭はそうした物を介したコミュニケーションの基地になっている。個人ホームページや自分史の流行、物への偏愛や懐古趣味といった現象は、こうした自己への関心のたかまりをしめすものだ。その理由は生きている意味の解決、神話や歴史にかわる個人の実存への回答(=リアリズム)を現代人はもとめているのではないだろうか?
きたるべきユビキタス社会においても、人間の個性がコミュニケーションのコンテンツの中核をなすことに変わりはないであろう。本研究会の目的は、個人の思い出を対象に、物とそれが機能する場である家庭の現状を把握すること、そして、ユビキタス社会の技術の方向性にたいして一定の提言をおこなうことにある。
研究の内容:
本研究の基礎資料となるのはつぎのふたつの先行研究である。
1 CDI(Communication Design Institute)がおこなった生活財生態学:1970年代から 百の家庭を対象として繰り返し行われた家のなかの物の悉皆調査。日本の家庭にある物の数や時代・地域による変遷などにかんする唯一のデータとなっている。
2 「2002年ソウルスタイル」の生活財調査:国立民族学博物館でおこなわれた展示のために、韓国ソウルのある家庭のすべての物を調査した。総数1万点あまり。現在は家族の所有するすべての家族写真約3千点の分析がすすんでいる。(みんぱくの「韓国生活財データベース」へ)
これらの成果をベースにしながら、本研究では、現代家庭における「物」の最も重要なコンテンツとして個人の「思い出」を位置づけ、「思い出」にまつわる多方面の知見と可能性をあきらかにするための研究会を組織する。
1 CDI(Communication Design Institute)がおこなった生活財生態学:1970年代から 百の家庭を対象として繰り返し行われた家のなかの物の悉皆調査。日本の家庭にある物の数や時代・地域による変遷などにかんする唯一のデータとなっている。
2 「2002年ソウルスタイル」の生活財調査:国立民族学博物館でおこなわれた展示のために、韓国ソウルのある家庭のすべての物を調査した。総数1万点あまり。現在は家族の所有するすべての家族写真約3千点の分析がすすんでいる。(みんぱくの「韓国生活財データベース」へ)
これらの成果をベースにしながら、本研究では、現代家庭における「物」の最も重要なコンテンツとして個人の「思い出」を位置づけ、「思い出」にまつわる多方面の知見と可能性をあきらかにするための研究会を組織する。